技術を教えるのか、考え方を教えるのか。その違いが、あなたの3年後を決める。
所長この記事を書いている著者は・・
- YouTubeチャンネル『テニスメカニズム研究所』運営(登録者2.6万人)
- テニスメカニズムスクール運営(YouTubeメンバーシップ)
- 書籍『YouTubeで学ぶ 世界のテニス戦略』著者
- 理学療法士(医療国家資格)
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【出版書籍】
なぜ「上手い人のアドバイス」で迷うのか
フォアハンドの悩みって、結局いつも同じところに行き着きませんか。スピンをかけようとするとスピードが出ない。スピードを出そうとするとミスが増える。で、誰かに相談すると「もっと振り切って」とか「タイミングを早く」とか言われて、ますます混乱する。
私も長年テニスを教えてきて、この「アドバイスの渋滞」みたいな状況をたくさん見てきました。みんな良いことを言ってるんです。でも、なぜか上手くいかない。
最近、ある動画で錦織圭選手がジュニア選手を指導している場面と、海外のトップコーチが同じようなテーマで教えている映像を見比べて、ハッとしたんです。二人とも正しいことを言ってる。でも、見ている「時間軸」がまったく違う。
これ、すごく大事なことだと思うんですよね。
「今日勝つ」と「3年後勝つ」は、別のゲーム
錦織選手の指導を見ていて印象的だったのは、とにかく現実的だということ。
ジュニア選手が「フォアが苦手で、特に高いボールが打てない」と相談したとき、錦織選手は技術的な問題点を指摘しつつも、それを無理に直そうとはしなかったんです。代わりに「じゃあ今できることで勝つにはどうするか」を教えた。
深いボールが来たら下がって打つ。チャンスボールは前に入って攻める。ディフェンスを打ったらすぐ攻撃ポジションに戻る。弱点は最小化して、得意を最大化する。
これって、明日の試合で使える知恵なんですよね。
でも同時に、錦織選手はこうも言うわけです。「今は直さないと上に行けない。この数年は試合に負けてもいいから、思い切り打つ努力をしてほしい。そうしたら2、3年後には良くなっている」って。
ここで私、膝を打ちました。ああ、これか、と。
プロとして世界で戦ってきた人の言葉って、今日と3年後が、同時に見えてるんです。今すぐできる戦術と、将来のために今やるべきことを、ちゃんと分けて考えてる。
「なぜ」を教えるか、「何を」を教えるか
一方、海外のコーチの教え方を見ると、これがまた違う角度で面白い。
ムラトグルー氏の指導は、とにかく原理原則から入る。なぜスピードとスピンが両立しないのか。どうすれば軌道をコントロールできるのか。その仕組みを理解させてから、段階的に練習させていく。
まず高い軌道で打たせる。次にもっと高く。その次はポジションを変えて。各段階で「振り切ってスピンをかける」という基本を徹底する。
これ、一見遠回りに見えるんですけど、一度理解すれば応用が効くんですよね。なぜなら、状況が変わっても原理は変わらないから。
錦織選手が「この状況ではこう打て」と教えるのに対して、海外のコーチは「こういう原理で打てば、どの状況でも対応できる」と教える。どっちが正しいかじゃなくて、どっちも必要なんだと思います。
私たちが本当に欲しいのは「魔法」じゃない
ここからが本題なんですけど、じゃあ私たち一般プレーヤーは、どうすればいいのか。
多くの人が陥る罠って、「一発で治る方法」を探し続けることだと思うんです。この打ち方を覚えれば、この意識を持てば、すぐに上手くなる、みたいな。
でも、錦織選手もムラトグルー氏も、そんなこと言ってないんですよね。
錦織選手は「2、3年かけて直せ」と言うし、ムラトグルー氏は「段階を踏んで習得しろ」と言う。つまり、時間がかかることを前提にしてる。
じゃあその時間をどう過ごすかというと、錦織選手は「今できることで勝ちながら、挑戦も続けろ」と言い、ムラトグルー氏は「正しい方法で段階的に学べ」と言う。
これ、合わせ技が最強だと思いません?
実践と原理、両方あってこそ
私がこの動画台本を作りながら気づいたのは、テニスの上達って二つの軸で進むということでした。
一つは「今の自分で勝つ」という軸。弱点を認識して、それでも勝てる戦い方を見つける。これは短期的な成功体験を積み重ねて、テニスを楽しみ続けるために必要。
もう一つは「将来の自分を作る」という軸。原理を理解して、段階的に技術を習得する。今はミスしても、2、3年後に花開くことを信じて挑戦する。
この二つが回り始めると、テニスって驚くほど面白くなるんですよね。
あなたは、どちらの時間を生きていますか
最後に、ちょっと問いかけさせてください。
あなたが今、練習や試合で悩んでいることって、「今日の試合に勝つため」の悩みですか? それとも「3年後の自分を作るため」の悩みですか?
もし前者なら、戦術を見直してみる価値があるかもしれません。弱点を無理に直そうとせず、今できることで勝つ方法を考える。
もし後者なら、原理を学んで、段階的に練習する時間が必要かもしれません。ミスを恐れず、正しい方法で挑戦し続ける。
どちらが正解かじゃないんです。両方、同時に必要なんです。
私がテニスメカニズム研究所で海外の理論を紹介し続けているのも、この「時間軸の違い」を知ってほしいからなんですよね。日本の指導が間違ってるわけじゃない。海外の指導が絶対に正しいわけでもない。ただ、見ている景色が違う。その両方を知ることで、自分の道が見えてくる。
あなたのフォアハンドは、今日と3年後、どちらを向いていますか?


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