ムゼッティの片手バックハンド分析|戦略的なスライスについて解説

「完璧なフォームじゃなくていい」——ムゼッティが証明した、弱点だらけでもトップ10に立てる理由 

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片手バックハンドって、もう時代遅れ?

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正直に言うと、私もしばらくそう思っていたんです。

現代テニスはスピードとパワーの時代。両手バックハンドの安定感が主流になって、片手バックは「美しいけど非効率」みたいなイメージが広がっていますよね。

でも、ロレンツォ・ムゼッティを分析していて、その考えが揺らいできました。23歳、現在トップ10。片手バックハンドを武器に、クレーシーズンのマスターズで次々と準決勝以上に進出している選手です。

彼のプレーを掘り下げるほど、気づくんです。「この選手、実はかなり弱点が多い」と。

サーブが弱い、フォアも課題がある、でもトップ10

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ムゼッティのサーブを客観的に見ると、トップ25の中でエース数は最下位クラス。サービスポイント獲得率も平均を下回っています。日によっては200キロを超えることもありますが、安定感という意味では正直厳しい。

フォアハンドも、テイクバックが大きくて準備に時間がかかるフォーム。速いボールへの対応には苦労するタイプです。

これ、アマチュアプレーヤーとしてはちょっと救われる話じゃないですか。プロでもトップ10の選手に、これだけはっきりした弱点があるんですから。

じゃあ、なぜ勝てるのか。

ローマでのツェルフ戦を調べていて面白い数字が出てきました。ファーストサーブでの得点率が、サーブで劣るムゼッティの方が上回っていたんです。サーブ自体は負けていても、そのあとの展開力で帳消しにしている。

ここに、ひとつの答えがある気がしています。

「決めよう」より「良いボールを打とう」

実は私自身、回り込んでフォアで攻撃しようとするとき、力んでミスすることが多いんです。「チャンスだ、ここで決めなきゃ」って思った瞬間に、ラケットが走らなくなる感じ。これ、経験ある方も多いんじゃないでしょうか。

ムゼッティの試合を分析していて気づいたのは、彼が追い込まれた時ほど自由にスイングしているということです。

モンテカルロで第1セットを1-6で落とし、第2セットでもブレークダウン。誰が見ても「もう終わりか」という状況から逆転した試合があります。その場面で彼が守りに入ったかというと、逆なんです。攻撃を増やしていた。

「決めよう」じゃなくて「良いボールを打とう」という意識の違い、なのかもしれません。

私も最近は、守ろうとするとボールが浮いて結局やられるよりも、思い切って攻める方がミスが減ると感じています。

スライスは「逃げのショット」じゃない

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ムゼッティの片手バックハンドで、特に注目しているのがスライスの使い方です。

両手バックハンド使いの私が対戦相手として一番嫌なのが、低く差し込んでくるスライスなんですよね。打点を下げられると強打できない。かといって守ると浮いて攻撃される。このジレンマが本当に厄介で。

ウィンブルドンのフリッツ戦を分析していると、ムゼッティのスライスがまさにこの状況を意図的に作り出していました。低く滑るスライスで前後左右に揺さぶって、相手が低い打点から苦しいショットを打たざるを得ない状況を作る。そこで浮いたボールをトップスピンで打ち抜く。

2段階の組み立てです。スライスはそれ単体で使うんじゃなくて、次の攻撃への布石として機能している。

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両手バックハンドの方でも、この発想は取り入れられると思っています。短く低く滑るスライスで相手を前に引き出して、浮いたところを叩く。戦術の組み合わせとして使うイメージです。

「得意な状況を作り出す」という発想

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ムゼッティのサーフェス別成績を調べると、クレーとグラスは勝率60%以上なのに、ハードコートだと47%台で負け越しています。トップ10選手相手のハードコート成績は3勝11敗。かなりはっきりした差です。

でも、だからトップ10じゃないかと言われるとそうじゃない。得意なサーフェスでしっかり稼いで、苦手なサーフェスは最低限戦える。そのバランスでトップ10の座を維持しています。

アマチュアの試合でも、これって応用できますよね。自分のプレースタイルが最も活きる状況を理解して、その状況を意図的に作り出す。フォアハンドが得意なら、バックハンド側にボールを集めさせないポジショニングを取る。スライスが武器なら、ラリーの中でそれを引き出せる展開を作る。

完璧なオールラウンドプレーヤーを目指す必要はなくて、「自分の得意をどう引き出すか」という問いの方が、実は勝利への近道だったりするんですよね。

9歳からの同じコーチと歩んで

ちょっと技術から離れた話をすると、ムゼッティは9歳の頃からずっと同じコーチと組んでいます。2023年に成績が伸び悩んだとき、周囲からコーチ変更を勧められたそうです。でも彼の答えは「そんなこと考えたこともない」でした。

テニスって個人スポーツですが、誰かとの長い信頼関係の中で育っていく部分があるよなと、この話を読んで改めて思いました。

2024年は前半不調でしたが、ウィンブルドン準決勝、オリンピック銅メダルと復活しています。波があっても、長いスパンで見れば確実に成長している。


皆さんは今、自分のテニスでいちばん「弱点だな」と感じているのはどこですか。

サーブ? バックハンド? メンタル?

ムゼッティのケースを見ていると、その弱点、もしかしたら補い方次第でそんなに大きな問題じゃないかもしれない、という気がしてくるんです。

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